Research Abstract |
初年度は申請研究の基盤となる糖類を内包したGUVの生成と安定性の評価を中心に行った.リン脂質L-αPhosphatidylcholine(PC)を用いてelectroformation法にて直径10μm以上の単膜リポソームの生成した.生成の安定性を調べるために種々のイオン濃度の水溶液中で生成を試みたところ,イオン濃度の上昇に伴い生成量は激減し,1mS/cmが生成の限界であることがわかった.さらに,生成の際の印加電場強度と周波数の影響を調べたところ,生成には,1)高周波においては,強い電場が必要であること,2)一定周波数以上では,脂質層はナノチューブを生成すること,3)生成中はクーロン力(生成中のみ帯電する)と思われるリポソームの振動が見られること,等がわかった. PCはゼーター電位がほぼ0であることから,細胞と共存させても凝集することがないことから,正に帯電している脂質DOPEについてもelectroformation法にて直径10μm以上の単膜リポソームを生成させることに成功した.このリポソームは負に帯電している細胞と密着するものの,融合には到らなかった。予備実験として細胞-リポソーム共存でelectrofusionを試みたところ,細胞内導電率が1mS/cm,直径10μm程度のPC-GUVを強く細胞(Jurkat)に密着させた場合のみ,極めて低い確率で融合が見られた.DOPE-GUVについては,細胞内導電率によらず膜の電気穿孔に相当高い電場を印加する必要があり,常に細胞膜が先に破壊した,このことは絶縁破壊膜電位がPC等に比較して高いことを示している.以上より,electrofusionには,1)絶縁破壊膜電位が低いPCが必要なこと,2)GUVの膜電位を高くするために,GUV内の導電率が高く,サイズも細胞並みであること,がわかった. 尚,次年度の細胞内導電率測定のための回転電場印加装置も年度内に作製して予備実験を行った.
|