Research Abstract |
我々は,室温におけるペンタセン(Pn)薄膜と6,13-ペンタセンキノン(PnQ)薄膜の成長機構を,LEEMによるその場観測実験により明らかにした.PnとPnQは,Si(111)清浄表面基板上およびBi(001)/Si(111)基板上に超高真空下で蒸着した.いずれの場合も,非常に結晶性の高い薄膜が得られたが,核形成および成長機構に関しては,PnとPnQでは大きく異なるということが,我々の実験結果から明らかになった.化学的に活性なSi(111)-7x7表面上にPnを蒸着した場合,まず無秩序な濡れ層が形成され,その上に結晶性のフラクタル形状の島が形成される.しかしながら,この界面における無秩序な濡れ層により,膜の結晶性は低くなる.一方,PnQは同じ表面上において同様な濡れ層を形成するが,その後,アモルファスでサイズの小さいグレインから,二次元光学活性を示す結晶性の高い羽形状のグレインへの相転移を示すことが明らかになった.また,よく制御された,半金属Bi(001)基板を用いた場合,Pn分子はBi(001)基板に対して"point-on-line"方位関係によりエピタキシャル成長し,第一層目は直径が200mmを超えるドメインが形成されることを見出した.これは,これまでに報告されているものの中で,最も大きなドメインの一つである.PnQも同様にBi(001)表面上にエピタキシャル成長するが,室温で成長した場合,大きな異方性をもつドメインが形成されることが明らかになった. 超高真空マイクロプローバー&チャンバー(Model:iSF-4BN/SI,株式会社インターナショナル・サーボ・データー)を購入し,既存の超高真空STMシステムへの取り付けが完了している.この装置により,本プロジェクトで観測された,それぞれの分子の各構造における電子状態のその場観測が可能どなる.
|