2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17686027
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
松下 伸広 東京工業大学, 応用セラミックス研究所, 助教授 (90229469)
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Keywords | NiO膜 / FeCoB膜 / スパッタ堆積 / RF放電 / ノイズ抑制体 |
Research Abstract |
設備備品として導入したRFスパッタ電源ユニットが納品されるまでは、昨年度に引き続き直流電源を用いてNiO/Fe-Co-B膜の作製をおこなった。Niターゲット及びO_2フローによる反応性スパッタリングを利用し、ガラス基板上にNiO薄膜を基板温度のみを変化させて120nm堆積後、X線回折装置(XRD)により配向状態を確認した。これとは別に、同様の方法により50nm堆積したNiO薄膜上に、Fe_<64>Co_<21>B_<15>ターゲットを一定の条件でスパッタリングして10nm堆積することでFeCoB/NiO積層膜を作製した。XRD測定の結果、NiO薄膜の配向は基板温度により容易に制御が可能であった。基板温度が200℃までの低い場合、基板温度の上昇と共に(111)面のピーク強度が増加したが、(200)面のピークは表れなかった。しかし、基板温度200℃以上では基板温度の上昇に伴い(111)面のピーク強度は小さくなり(200)面の配向が顕著になった。このNiO層の配向面はFeCoB/NiO積層膜の磁気異方性に大きく影響した。FeCoBのみでは53Oeであった磁気異方性を、基板温度が200℃までと低い場合、すなわちNiO層が(111)配向している場合には、基板温度の上昇と共に大きくなり、100℃において最大の122Oeとすることに成功した。しかし、基板温度200℃以上になると磁気異方性は次第に減少した。これは、NiO層の結晶配向面の変化に加えて、FeCoB層との界面における原子拡散による影響も考えられた。RFスパッタ電源ユニット導入後には、これを用いて金属Niターゲットから(111)配向NiO膜を堆積するための条件探索を進めた。この結果、基板温度300〜500℃、RF放電電力200W(反射電力〜0W)の条件において、NiO(111)膜の堆積に成功した。直流放電で堆積した場合との大きな違いとして、基板温度を500℃と高くしても安定に(111)配向が得られる点と膜厚約100nmを堆積するのに約90分を要するなど堆積速度が遅くなる点が挙げられる。このRF放電により作製されたNiO(111)層上に、FeCoB層を堆積した膜では、異方性磁界が約60Oeと直流放電で得られた最大値よりも低いものであった。この原因としては、NiO層の結晶配向が十分でなかったことが一因であると考えられるので、19年度にはその堆積プロセスの最適化を進める予定である。
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