2005 Fiscal Year Annual Research Report
生物学的栄養塩類除去プロセスにおける同位体解析を導入した微生物ループの解明
Project/Area Number |
17686047
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
蛯江 美孝 独立行政法人国立環境研究所, 循環型社会形成推進・廃棄物研究センター, 研究員 (90391078)
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Keywords | 微生物ループ / 生物学的排水処理 / 分子生物学的解析 / 放射性同位体解析 / 安定同位体解析 / 捕食-被食関係 / 窒素・リン / 基質資化特性 |
Research Abstract |
水処理システムを効率的かつ安定的に運転・管理する上では,微生物ループの機構解明が不十分であることが指摘されている。本研究では,処理機能を担う有用微生物群の機能強化を目指した微生物ループのメカニズムの解明を図ることを目的として検討を行った。 初年度は,食物連鎖系としての微生物ループの機構解明を図る上での重大な課題である微生物個体群動態と物質フローの同時解析技術の確立において,遺伝子解析と同位体解析(RI, SI)を組み合わせた解析技術を確立し,脱窒細菌,ポリリン酸蓄積細菌(PAOs)等の窒素・リン除去プロセスを担う有用微生物の基質資化特性とその環境条件,運転操作条件等との関係解析を行った。 MAR-FISH法による解析の結果,リン除去性能が良好な場合においてもPAOsの個々の細菌によって活性が大きく異なる場合があること,PAOsと共生・競争等において密接に関わる4分子状のクラスターを形成する微生物が存在し,その中でも機能・活性が異なることなどが示唆された。また,この4分子状の形態をもつG-bacteriaと称される微生物は,嫌気条件下においてPAOsと基質競合関係にあることが示唆されたことから,16SrRNA遺伝子断片の塩基配列を決定し,新規のFISHプローブを設計し,形態学的に異なる2種のG-bacteriaの存在を確認することができた。今後微生物ループにおけるG-bacteriaの役割を解明することによりプロセスの処理性能をより高度化することが可能となると考えられた。また,脱窒細菌についてもSIP法を導入した細菌群集構造解析により,脱窒炭素源の違いによる活性汚泥内の細菌群集の影響を効率的に評価・解析できることが示され,活性汚泥という複雑な微生物生態系からメタノールと酢酸を利用する窒素除去プロセスに密接に関わる細菌群集が明らかにされた。
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