2005 Fiscal Year Annual Research Report
FSW性に優れた鉄鋼材料開発のための接合ツール摩耗現象と摩耗残存物の挙動解析
Project/Area Number |
17686061
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 裕 東北大学, 大学院・工学研究科, 助手 (00292243)
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Keywords | 摩擦攪拌接合 / 鉄鋼 / 回転ツール / 摩耗 |
Research Abstract |
構造物の溶融溶接時に生じる問題点は、固相状態での強ひずみ付与により達成される摩擦攪拌溶接(FSW)により大幅に軽減できる。現在、鉄鋼材料に対するFSW用ツールは市販のものも含めて数種類存在するが、いずれもFSW中に摩耗し、ツール摩耗残存物は、鉄鋼の合金成分と反応し、特性劣化を引き起こす反応生成物を形成することが示されている。しかし、既存のツールでさえ、高融点、高い高温強度、高い耐摩耗性を有する特殊な材料であることを考えれば、摩耗のないFSW用ツールを開発することは事実上不可能であるため、鉄鋼材料のFSWを普及させるためには、FSW中に生じるツールの摩耗現象と摩耗残存物と鉄鋼合金成分の反応メカニズムを解明し、摩耗が起こったとしても特性劣化が起こらない鉄鋼材料の開発が必要である。本年度は、各種切削工具材料ならびに高融点金属材料を用いて鉄鋼材料用FSWツールを試作し、各種鉄鋼材料のFSW過程におけるツールの摩耗現象ならびに摩耗残存物と鉄鋼との反応生成物について調べた。鉄鋼材料用FSWツールは、CBN(立方晶窒化ホウ素)、W-Re合金、WC、Al_2O_3/TiCにて試作した。オーステナイト系ステンレス鋼に対するFSWの結果、摩耗量は切削工具材料が小さく、W-Re合金で多くなることがわかった。また、いずれのツールの場合でも、摩耗残存物は攪拌部の一部(前進側)へ蓄積されることが示され、機械的特性に及ぼすツール摩耗の影響は見られなかった。しかし、CBNツールからの摩耗残存物は、ステンレス鋼中のCrと反応してCrほう化物を形成し、著しい耐食性劣化を引き起こすことが示され、一方W-Reツールの場合には、ステンレス鋼中にフェライトを形成してフェライト中に固溶し、耐食性の劣化はほとんど起こらないことが示された。摩耗と反応現象については年度をまたぐ計画となっているため、WCならびにAl_2O_3/TiCに関する検討は次年度初旬まで継続する予定である。
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