2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17687006
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
西野 浩史 北海道大学, 電子科学研究所, 助手 (80332477)
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Keywords | 昆虫 / キノコ体 / 中大脳 / 触角葉 / 嗅覚 / 受容野 / 系球体 / 中枢投射 |
Research Abstract |
匂いの質・方向・濃度は絶え間なく変化する。動物がこれらのパラメータをどう識別しているのかは神経科学の中心課題のひとつである。夜行性昆虫の嗅覚最高次中枢(キノコ体)は哺乳類の大脳皮質にも似た精緻なコラム構造をもつが、そのシステムとしての動作原理はほとんど明らかにされていない。本年度は匂いの位置に関する情報がキノコ体でどのように処理されるのかを明らかにすることを目的とした。 まず、計画に沿って、触角に局所的な匂い刺激を与える装置を製作した。これは先端径が約1ミリのガラス管を触角表面に近接させ、触角表面のごく少数の匂い受容細胞の刺激を可能にする装置である。 この装置を用いて、受容野依存的に応答する介在ニューロンを細胞内記録により探索したところ、いくつかのキノコ体入力ニューロンが候補として挙げられた。それらの樹状突起の分布は複数の糸球体に及ぶが、各糸球体についてみるとごく一部の領域を覆っており、しかもその領域は触角の特定表面に由来する匂い受容細胞の軸索終末の分布領域と良く対応していた。一方、その軸索終末はキノコ体と前大脳側葉部にみられた。これは匂い受容野依存的な形態を示す投射ニューロンの初めての発見である。現在、このニューロンの受容野選択的な応答の解析、匂い物質を直接触角に接触させたときの応答解析を進めている。 さらに先行研究のとりまとめに従事し、1)触角上の匂い受容細胞の軸索終末が末梢での細胞体の位置依存的な糸球体地図を持つこと、2)アリの警報フェロモン応答にあずかる糸球体が触角葉背側に存在すること、を2本の国際誌に発表した。 今年度は新規性の高いデータを得ることができたこと、2本の良質の論文が出版されたことを鑑みると、研究達成率は概ね80%程度と総括したい。
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