2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17687024
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
荻原 直道 京都大学, 大学院・理学研究科, 助手 (70324605)
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Keywords | 人類学 / 手指 / 筋骨格モデル / 3次元形態学 / 精密把握 / シミュレーション |
Research Abstract |
本年は,導入した非接触形状スキャナーを用いて,ヒトおよびチンパンジーの手骨を3次元的に計測し,その形状をコンピュータ内に再現する手法を確立した。ヒトの標本は京都大学自然人類学研究室,チンパンジーはチューリッヒ大学人類学研究室と日本モンキーセンターのものを用いた。 ただし国外の標本については,歯科用印象材を用いて作成した標本の鋳型を計測し,骨形状を再構成した。計算機内に再現した3次元骨形状の体積を,メスシリンダから求めた実体積と比較した結果,ほぼ正確に形状が構築されていることを確認した。 また,構築した3次元骨形状データから,関節形状の幾何学的形態に規定される運動学的拘束を定量化する手法を開発した。具体的には,各関節面の形状を二次曲面もしくは平面で近似することにより,関節面の向き,関節面の曲率半径,回転中心の位置などを推定する手法を考案した。この手法を用いて,ヒトとチンパンジー中手骨の形態的変異の分析を進めた。 さらに,ヒトおよびチンパンジーの解剖学的に精密な手部筋骨格モデルを構築し,その形態に規定される精密把握能力の生体力学的推定手法の開発を進めた。骨格系は,上述の関節形態の分析結果に基づいて各関節の運動学的拘束を表現した,直鎖型の剛体リンクとしてモデル化した。筋は起始点から停止点までを経由点を介して結ぶ線分としてモデル化し,その最大筋張力は生理学的断面積に比例するものとした。このようなモデルを用いることにより,各筋が指先で発生しうる力の向きと大きさを生体力学的に推定することが可能となった。 今後,初期人類(アウストラロピテクス・アファレンシス)化石(キャスト)の3次元形状を計測し,その手部筋骨格モデルの構築を進める予定である。
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