Research Abstract |
これまでの研究で雄性マウスにカーボンナノ粒子(CB,平均粒径14nm)を気管内投与したところ,雄性生殖機能に悪影響が生じることを明らかにした。しかし,生殖系への影響が用いた粒径のナノ粒子に特異的なものか,ナノ粒子一般に共通するものか不明であり,また,雄性生殖機能への影響は粒子の重量濃度あるいは個数濃度に起因するか不明であった。そこで本研究では,粒径の異なる3種類の粒子(14,56,95nmの粒子)を用い,雄性生殖機能への影響を検討し,さらに異なる粒子で粒子数を同一にした場合,影響が同程度であるか検討した。 5週齢の雄性ICR系マウスを用いた。CBは0.05%Tween含有生理食塩水で懸濁し(1mg/ml),マウス1匹につき100μlを一週間に一度,10回気管内投与し,0.05%Tween含有生理食塩水を100μl気管内投与したものを対照群とした。ただし,粒子数の評価を行う群に関しては,重量濃度ではなく,粒子の個数濃度を概算し調整した懸濁液を用いた(用いた粒子は14nmおよび56nmの粒子であり,粒子径から56nmの粒子重量の1/64に相当する重量の14nmの粒子を用いると個数濃度は同一となる)。最終投与の翌日,体重測定後,精巣及び精巣上体を摘出し,精巣及び精巣上体重量の測定後,摘出した精巣をブアン固定し,HE染色後光学顕微鏡下で病理組織を観察した。血清中テストステロン(血清T)濃度はELISA法にて測定した。また,精巣一日精子産生能(DSP)の測定も行った。 粒径の異なる3種類のCB投与を行ったところ,精細管組織像の変性,血清T値,DSPの変動が同程度認められた。このことから,異なる粒子サイズであっても,雄性生殖機能に同程度の障害を与えることが示唆された。一方,粒子数を同一にしたCBを曝露したマウスでは56nmの粒子を投与したマウスの雄性生殖機能がより影響を受けていたことから,ナノ粒子の雄性生殖機能への影響に関し,粒子の個数濃度の寄与は少ないことが明らかになった。
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