2006 Fiscal Year Annual Research Report
モデルマウスを用いたミトコンドリア病の出生前治療法の開発
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17689023
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
中田 和人 筑波大学, 大学院生命環境科学研究科, 助教授 (80323244)
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Keywords | ミトコンドリア / ミトコンドリア病 / 病態モデルマウス / 呼吸欠損 / 治療 / 不妊症 / 精子形成 / 減数分裂 |
Research Abstract |
本研究ではミトコンドリア病モデルマウス(ミトマウス)の活用によって、「出生前治療法の開発」を目指している。ミトコンドリア病の治療としては、現状、呼吸鎖酵素の基質やビタミン類の投与などが行われれているが、このような方法では根本的な原因である変異型mtDNAを取り除くことはできない。このため、根治は困難であると考えられて来た。病気の根本的な原因である変異型mtDNAを取り除く方法としては、受精卵の核移植治療と父方非遺伝様式を利用した方法が考えられる。前年度はミトマウスに対し受精卵核移植を行い、ミトコンドリア病の病態発症抑制に成功した。そこで、今年度は父方非遺伝様式を利用した方法の検証を行った。 mtDNAは母性遺伝によって次世代に伝播されることから、変異型mtDNAを含有した雄のミトマウスマウスからは正常な子孫を得ることが可能であると想定できる。しかし、変異型mtDNAを大量に含有する雄マウスは、精子数の減少と精子運動能の低下による重度の不妊症を呈していることが分かった。精子数減少の原因は、変異型mtDNAの蓄積によつてエネルギー欠乏状態となった精細胞が減数分裂過程のパキテン期を越えられないことに起因していた。また、結果としてこのような細胞は細胞死を起こしてしまうこも分かった。 これらの結果は、ミトコンドリアからのエネルギー供給が哺乳類の精細胞の分化に必要不可欠で、その異常が男性不妊の直接的な原因になることを示している。今後、このミトマウスを用いることで、ミトコンドリア異常に起因する男性不妊の詳細な発症メカニズムの解明はもとより、効果的な治療法の開発や低下した精子の運動能を改善するための新規薬剤の検索が可能になると思われる。また、低下した精子運動能を改善できる薬剤はミトコンドリアのエネルギー産生能を増強する可能性があるため、ミトコンドリアのエネルギー欠乏に起因する多様な病気の治療に応用できると思われる。
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