2005 Fiscal Year Annual Research Report
妊婦交通外傷と胎児予後に関する科学的エビデンスの確立及び予防安全対策の検討
Project/Area Number |
17689024
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Research Institution | Dokkyo Medical University |
Principal Investigator |
一杉 正仁 獨協医科大学, 医学部, 助教授 (90328352)
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Keywords | 妊婦 / 交通外傷 / 胎児 / シートベルト / バイオメカニクス |
Research Abstract |
妊婦交通外傷の特徴を明らかにし、外力と胎児予後に関する科学的エビデンスを確立するために以下の検討を行った。 1)妊婦自動車乗員の特殊性についての調査 妊娠30週の妊婦ボランティアを対象に、乗車位置、車室内部との位置関係を計測して、一般女性(非妊婦)との差異を調査した。その結果、ステアリング下端から腹部までの水平距離は、妊婦群が非妊婦群に比べて約11cm短いことがわかった。すなわち、妊婦は腹部が前方へ突出し、ステアリングと接触する危険性が高くなることが分かった。 2)妊婦交通外傷と胎児予後についての実態調査 交通事故後に何らかの傷害を負った妊婦を対象に、妊婦交通外傷と胎児予後との関係を検討した。妊婦の腰部あるいは腹部に外力が作用すると、胎児予後がより不良になる傾向であった。さらに、胎児死亡例では妊婦の全身および腹部損傷の重症度が有意に高かった。しかし、流産例と新生児が健康な例では、妊婦損傷の重症度に有意差はみられなかった。妊婦の損傷重症度が低い場合でも、胎児を含む子宮全体が衝撃を受けている可能性がある。したがって、外力と胎児予後との関係を明確にすべく、以下の動物実験を行った。 3)妊娠ラットを用いた外力と胎児予後についての検討 妊婦への外力と胎児予後についての関係を科学的に検証するために、落下装置を用いたインパクトバイオメカニカル試験を行った。加速度及び衝撃を可変的に作用できる落下装置(衝撃のアクティブコントロール装置)を作製した。麻酔下で妊娠中期(11日目)のラットを仰臥位で落下させ、60Gまでの外力を腰部に作用させた。実験後から妊娠までの期間を観察した後、出生児の数、出産後の胎児予後を調査した。その結果、コントロール群、外力作用群で、出生児数、出生児の平均体重、出生後2週間目の体重に有意差は認められなかった。したがって、妊娠ラット腰部への外力が、胎児予後に影響をおよぼすことはなかった。
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