2006 Fiscal Year Annual Research Report
双極性障害における小胞体ストレス応答とAMPA型グルタミン酸受容体輸送の関連
Project/Area Number |
17689035
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
垣内 千尋 独立行政法人理化学研究所, 精神疾患動態研究チーム, 研究員 (90342766)
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Keywords | 双極性障害 / 小胞体ストレス / XBP1 / WFS1 / AMPA型グルタミン酸受容体 / GRP78 / GRP94 |
Research Abstract |
双極性障害の病態に関与している可能性のある小胞体ストレス応答の異常が神経細胞においてAMPA型グルタミン酸受容体の輸送異常を引き起こすかどうかについての検討を行った。まずAMPA型グルタミン酸受容体と共沈することが知られている小胞体ストレス関連遺伝子であるGRP78、及び同じく小胞体シャペロンであるGRP94について双極性障害との関連研究を行い、GRP78については機能的ハプロタイプが疾患と関連している可能性、GRP94遺伝子については日本人において強く疾患と関連していることを見出した。また予備的な検討から示された小胞体ストレス反応経路の中心的転写因子XBP1とWFS1の関係をさらに調べ、WFS1遺伝子プロモーター領域にXBP1による制御を受けるERSE様のモチーフを見出し、WFS1が小胞体ストレス関連遺伝子であることを示す結果を得た。WFS1は高率に気分障害を合併する遺伝性疾患Wolfram病の原因遺伝子で、双極性障害解明の手がかりとなる可能性が高い。そこで、マウス脳組織切片を用いてAMPA型グルタミン酸受容体の免疫組織学的検討を脳組織切片を用いて行ったところ、野生型マウスで観察される海馬の一部の細胞における強陽性像が、WFS1ノックアウトマウスでは観察されないことが判明した。本所見が輸送異常によるものであるかどうかは現在のところ不明である。なお本所見と行動変化の対応について行動解析を行い検討したところ、水迷路試験、恐怖条件付け試験など数項目で差がみられた。さらに初代培養神経細胞についてAMPA型グルタミン酸受容体のmRNAを定量したところ、XBP1ノックアウト細胞において有意な発現の変動がみられた。小胞体ストレス応答経路は、AMPA型グルタミン酸受容体の動態に、輸送を通じてか否かははっきりしないが、何らかの関与をしている可能性があると考えられた。
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