Research Abstract |
正常動物の脊髄腔内ヘインターフェロンγ(IFNγ)を投与することで,脊髄ミクログリアの活性化および持続的なアロディニア(難治性疼痛様の痛み行動)が発現した.脊髄におけるIFN γ受容体(IFN γ R)の発現細胞をin situ hybridization法により検討したところ, IFN γ R mRNAはミクログリアに特異的に検出された.さらに,IFN γによるアロディニアは,ミクログリアの活性化を抑制するミノサイクリンによりほぼ完全に抑制された.したがって,IFN γはミクログリアに発現するIFN γ Rを刺激して,ミクログリアを活性化し,持続的なアロディニアを誘導することが示唆された.そこで,実際の難治性疼痛モデル(Chungモデル)におけるIFNγの役割を, IFN γ R欠損マウス(IFN γ R-KO)を用いて検討した.野生型マウスでは神経損傷後にアロディニアの発症およびミクログリア活性化が認められたが,IFNγR-KOでは両者とも著明に抑制されていた.以上の結果は,IFN γが難治性疼痛時におけるミクログリアの活性化因子として重要な役割を果たしている可能性を示唆している. P2×4受容体発現増加因子としてfibronectin(FN)を同定した.本年度は, FNによるP2×4発現増加分子メカニズムを明らかにすべく,Srcファミリーキナーゼ(SFK)に注目した.ミクログリア培養細胞において,Lynキナーゼが主なSFK分子であること,さらに脊髄における発現細胞もミクログリアに特異的であることを明らかにした.さらに,Chungモデルの脊髄では, Lynの発現がミクログリア特異的に増加した.Lynの役割を検討するため, Lyn欠損マウス(Lyn-KO)を用いた.野生型マウスでは神経損傷後にアロディニアの発症およびP2×4の発現増加が認められたがLyn-KOでは両者とも有意に抑制されていた.さらに,Lyn-KOミクログリア培養細胞では, FNによるP2×4発現増加が完全に抑制されていた.以上の結果から,Lynは難治性疼痛時のP2×4発現増加に必須な細胞内シグナル分子であることが示唆された.
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