Research Abstract |
秘密分散法は,1つの秘密情報をシェアと呼ばれるn(【greater than or equal】2)個の分散情報に符号化する手法である.特に,(k,n)しきい値法と呼ばれる秘密分散法は,任意のk個のシェアから秘密情報を復元することができる一方で,どのk-1個以下のシェアからも秘密情報が全く漏れないという特徴をもっている.本研究の目的は,秘密分散法を従来とは異なる視点,特に符号器および復号器に必要な計算量という観点から秘密分散法を議論して,新しいタイプの秘密分散法を構成し,その性能を解析することにある.本年度は以下の2つの研究成果を得た. 第一の成果は,(k,n)しきい値法に関する新しい形の符号化定理を得たことである.まず,任意の情報源から出力される秘密情報をブロックごとに符号化する状況を考え,(k, )しきい値法が満たすべき性質を定式化した.次に,その定式化のもとで,各シェアと符号化に必要な一様乱数が満たすべき関係式を導出した.得られた関係式から,シェアサイズの下界と,符号化に必要な一様乱数の長さの下界を導出することができる.また,適当な条件のもとで,得られた下界はShamirの方法により達成されることも示された. 第二の成果は,(k,n)しきい値型の視覚復号型秘密分散法の復号において,新しいパラダイムを提案したことである.視覚復号型秘密分散法では,秘密情報は白黒2値の画像情報であり,符号化された画像は任意のk枚のシェアを重ね合わせることにより復号される.ところが一般には,復号された画像にはノイズが混入し,もとの画像が知覚しにくいという欠点があった.本研究ではまず,k枚以上のシェアを重ね合わせると,もとの画像がより明瞭に知覚される場合があることを指摘した.また,n枚すべてのシェアを重ね合わせたときに,n→∞のもとで白画素と黒画素の明るさの差が漸近的に最適になるような視覚復号型秘密分散法が構成できることを,k=2,3,4,5の場合に明らかにした.
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