Research Abstract |
近年注目されている個人認証に,バイオメトリクス(生体情報)を用いた方式がある.バイオメトリクスは生理的特徴(指紋,顔など)を用いたものと動作的特徴(声紋,署名など)を用いたものの二つに分類することができる.生理的特徴による認証は,パスワードの記憶などの煩雑さ,所有物の紛失や偽造を解消するとともに,なりすましが困難という長所を持つ.しかし生理的特徴の問題点として,(1)変更不可能性,(2)登録への精神的抵抗,(3)意識喪失時の脆弱性,(4)コスト面,などがあげられる.また,動作的特徴による認証は,変更可能であり,意識喪失時の脆弱性がなく,非常に柔軟な認証が可能である.しかし動作的特徴の問題点として,(5)認証率,(6)コピーされる危険性(なりすまし),などがあげられる. 本研究では,生理的特徴と動作的特徴を組み合わせることにより,上記の問題点を解決する,握るという行為を用いた個人認証システムの提案および開発を行った.本システムでは,圧力センサとカメラを埋め込んだ入力デバイス実装した.これをユーザが把握することにより,指の画像,圧力分布,および圧力変化の時間推移を把握動作データとして収集することが可能である.指の画像,圧力分布からは生理的特徴である手の大きさと形状,圧力変化の時間推移からは動作的特徴である握り方の変化を得ることが可能である.本年度は,多くの被験者からこれらのデータを収集し,弁別性,再現性の分析を行った.これらのデータを前もってシステムに登録し,認証時には登録したデータとの照合処理を行うことにより,生理的特徴と動作的特徴を組み合わせた認証が可能になり,上記の問題点を解決することができるとの見通しをつけた.
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