2006 Fiscal Year Annual Research Report
軽量な文法解析に基づくフォーカス解釈の多元的言語情報の表示と融合に関する研究
Project/Area Number |
17700163
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Research Institution | Osaka Gakuin University |
Principal Investigator |
大谷 朗 大阪学院大学, 情報学部, 助教授 (50283817)
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Keywords | 言語情報 / 解析 / 主辞駆動句構造文法 / 二重目的語構文 / シンタクス / セマンティクス / 階層辞書 / 語彙意味論 |
Research Abstract |
制約に基づく文法理論を解析の基盤とする言語解析では、シンタクスのみならずセマンティクス(や音韻)に関する言語情報を、さまざまな自然言語処理技術の具体的応用や、またそうした処理の精度向上を考える上での理論的基盤として適用することが原理的に可能である。しかしながら、従来の研究では、そうした言語制約の実装を指向した精緻化や制約間の関係記述などを問題とした言語学的分析およびその工学的応用が十分に検討なされていないという現状にある。特に、シンタクス以外の情報を言語制約としていかに実装上の制約に融合させるかという問題に関しては具体的提案がない。 そこで、大谷(2006)「『文法開発』-深い言語解析を指向した文法記述-」論文では、乖離する言語学と自然言語処理の過去をふりかえりつつ、シンタクスの利用に偏執した古典的な解析手法の限界および具体的問題点を示すとともに、制約に基づく文法理論のもと、簡単なセマンティクスを実装上の制約として導入することでそうした問題が回避できることを示した。 またOhtani(2006)"Japanese Ditransitive Verbs and the Hierarchical Lexicon"論文では主辞駆動句構造文法(HPSG)に基づき、日本語の文解析を考える上では常に問題の一つに挙げられ、言語学的にも精細な分析が必要とされている二重目的語動詞構文に関して、以下のことを論じた。 ・語彙意味論などで広く仮定されているセマンティック・プリミティブ(意味素)を基盤とした述語の意味を規定する階層的意味関係辞書のモデル骨子を提案した。 ・日本語(英語)二重目的語動詞の類型は、この階層辞書のノードに対応し、構文のセマンティクスおよびその意味的特徴は、それを規定するプリミティブおよびその合成内容として捉えられる。 ・シンタクスに基づく従来の類型およびその例外は、セマンティクスの制約を中心に据えることでより精細に捉え直すことができる。特に、各構文に特有のものとして考えられてきた統語上の振舞いの違いおよび意味内容の(部分的)共通性は、語彙レベルで言語情報が融合したモデルを仮定すると、言語学的分析上、また工学的実装上、アドホックな記述は必要なくなる。
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Research Products
(2 results)