Research Abstract |
本研究では頭部MRI画像を用いて,痴呆や脳疾患による局所的な脳萎縮の定量化を目的としている.これにより痴呆や脳疾患の進行度が評価可能となり,臨床診断はもちろん,治療薬や治療法の開発における有知性検証にも極めて有効である.そこで本年度は,脳薬別の萎縮度算出システムの基幹技術として,(研究1)脳葉(前頭葉,後頭葉,側頭葉,頭頂葉)分割システムを提案しさらにより位置を限定するため(研究2)脳回別の萎縮度算出のための脳溝自動認識法を提案した. (研究1)脳葉分割システムにおいては,まずこれまで解剖学的な知識上でのみ定義され,数学的にはあいまいであった脳葉の定義を明確にすることで,計算機上での脳葉分割法開発を可能とした.次に,同定義に基づき自動的に脳葉分割を行うシステムを提案した.これにより,高い精度で安定して脳葉分割,体積測定,立体表示が可能であることを示した. (研究2)脳溝自動認識法においては,脳表で特徴的である中心溝などの代表的な脳溝の位置,形状をファジィ論理で表現することで,専門家である意思の知識を計算機上で使用可能とした.また,同知識を用いた画像処理技法(知識に基づくパターンマッチング法)を提案することで,脳回分割のための脳溝認識を可能とした. 以上の研究により,脳の局所的な体積などの数値化が可能となった.しかし,分割単位(すなわち脳回単位,脳薬単位)の萎縮度の算出には,その正常値となる体積値の推定や,比較可能な数値の算出法を検討する必要がある.また,被験者数を増やし,本提案システムの精度検証,安定性の検証を行う必要もある.さらには,同システムで算出した値を基に臨床応用を行うことで,研究自体の有用性も明らかにしていく.
|