2006 Fiscal Year Annual Research Report
呼吸音の遅延フィードバックが不随意的呼吸に及ぼす影響に関する研究
Project/Area Number |
17700267
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Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
高瀬 弘樹 東京電機大学, 21世紀COEプロジェクト推進室, 助手 (60345725)
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Keywords | 呼吸音 / 遅延フィードバック / 認知科学 |
Research Abstract |
本年度は,昨年度構築した遅延時間0-msec(遅延無)から最大遅延時間が1000-msecまでの制御が可能な遅延聴覚フィードバック(delayed auditory feedback : DAF)システムを用いて,研究課題に関する本実験を実施するための予備実験を繰り返し行い,独立変数操作量(遅延時間等)の決定,実験遂行上の問題点の対策等を行った.呼吸音の計測には被験者の口鼻付近に設置されたIEPEマイクロフォンを用いて行われたが,低雑音かつ十分な音量の呼吸音を計測・検出することが困難であることが問題点として生じた.聴診器をマイクロフォンと接続し,被験者の頚部に聴診器をあて気道の呼吸音を計測することで,明瞭な呼吸音を計測が可能となり問題は解決された. 呼吸音の遅延時間に関しては,これまでのDAFに関する研究において,実行している運動の種類に関わらず遅延時間が200-msecのとき,その運動のエラーが最大となることが明らかにされていることから,まずは安静状態の被験者に対し200-msec前後の呼吸音遅延フィードバックが被験者の呼吸に影響を及ぼすか検討した.その結果,被験者の呼吸にDAFの影響は認められず,内省報告によると,被験者は呼吸音の200-msec前後の遅延操作に気づかなかった.遅延操作に気づく傾向が認められるのは700〜800-msec以上の遅延時間であった.これは,これまでDAF研究で検討されてきた発話やタッピング音がその開始時と終了時が明確であるのに対し,呼吸音は特に吸気開始時・終了時と呼気開始時・終了時に音量が急激に減少するため,吸気相と呼気相の境界の区別が知覚しにくいことが原因として挙げられる.また,この遅延操作が知覚可能となる遅延時間は呼吸の周波数に従属しており,呼吸が速くなると知覚可能となる遅延時間が短縮する現象が認められた.
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