2005 Fiscal Year Annual Research Report
演算結果としてタンパク質を出力する自律型生体高分子コンピュータの構築
Project/Area Number |
17700291
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
木賀 大介 東京工業大学, 大学院・総合理工学研究科, 助教授 (30376587)
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Keywords | DNAコンピュータ / タンパク質 / 無細胞翻訳系 / 構成的生物学 / 細胞機能の再構成 |
Research Abstract |
生体高分子システム研究の構成的アプローチの一環である本研究の目的は、mRNAなど天然のRNAを入力とし、分子演算の途中過程で入力とは全く異なる配列のRNAを生成して、これを鋳型とする翻訳反応を行い、最終結果としてタンパク質を出力する自律型生体高分子コンピュータを創出することにある。この生体高分子コンピュータは、逆転写酵素および転写酵素の活性に依存することから、RTRACSと呼ばれる。 本年度は、この系の中心となるAND演算について、2種類の入力RNAの量を様々に変化させた場合の系の挙動について精査した。その結果、入力RNAがある範囲まで多くなると、出力RNA生産の最大速度も速くなるだけでなく時間に伴う出力増加がより早くなる一方で、入力が多くなりすぎるとこの出力増加が遅くなってしまうことを見出した。同時に、入力の多少の変動にもかかわらず出力が安定するという、安定に動作する回路を作成できる性質も見出した。個々の反応を制御することが難しい酵素反応をシステム化することで、安定に動作するデジタル的な回路を作成できたことは、生体高分子コンピュータの今後に寄与するところが大きい。 また、分子コンピュータの出力としてタンパク質を生産する際に、翻訳の鋳型となるRNAがどれだけ生産できるか、という観点も重要である。そこで、mRNAの部分配列からの配列変換とAND演算を行った際の増幅効率を測定したところ、100倍以上であることが判明した。これより、タンパク質の生産に問題ない量のmRNAを分子コンピュータによって生産可能であると考えられる。
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