2006 Fiscal Year Annual Research Report
中枢神経回路形成における神経活動の役割:レトロウイルスによるin-vivo解析
Project/Area Number |
17700305
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田端 俊英 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (80303270)
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Keywords | 神経科学 / 脳・神経 / シナプス可塑性 / 神経活動 / 生理学 / 発達 |
Research Abstract |
中枢神経系では発達初期に過剰なシナプス形成が起こり、発達後期に冗長なシナプスが活動依存的に除去されることにより成熟シナプス回路が完成される。しかし従来の薬理学的・遺伝子学的テクニックによる研究では対象となる脳部位の全てのニューロンの活動性を一斉に変化させるため、個々のニューロンの活動がどのようにシナプス発達に寄与するかは不明であった。本研究ではマウス小脳をモデルとして、トランスジェニック技術を用いて生体内において一部の小脳プルキンエ細胞に内向き整流性K^+チャネル(IRK1)を発現させ、それによって生じた興奮性低下が当該プルキンエ細胞周囲のシナプス回路の発達にどのような影響を与えるかを解析した。 tetOpプロモーター(tTA因子依存的プロモーター)制御下にIRK1とGFPの遺伝子を組み込んだコンストラクトを受精卵に注入し、tetOp-IRK1-GFPマウスを作出した。このトランスジェニック・マウスをNSE-tTA B lineマウス(Sakai et al.,2004)と交配した。交配により作出されたマウスでは一部のプルキンエ細胞に限局してtTA因子産生が起こり、IRK1およびGFPが発現すると期待される。生後3週齢〜2ヶ月齢のマウスの小脳スライスからGFP陽性プルキンエ細胞が観察された。これらマウスのプルキンエ細胞の大部分は正常な形態の細胞体や樹状突起を有していたが、一部の細胞について細胞体がプルキンエ細胞層外に存在する例や、変性脱落している例が観察された。また登上線維を細胞外電気刺激したところ、過剰な登上線維シナプス入力の残存を示す複数の振幅ステップのシナプス後電流を示すものが見つかった。これらの結果は、プルキンエ細胞のシナプス後活動が小脳シナプス回路の発達に重要であることを示唆している。
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