2005 Fiscal Year Annual Research Report
海馬歯状回・神経新生の睡眠による調節メカニズムの神経科学的解明
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17700312
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
守屋 孝洋 長崎大学, 大学院医歯薬学総合研究科, 講師 (80298207)
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Keywords | 睡眠 / 神経新生 / 神経幹細胞 / 再生医学 / 海馬 |
Research Abstract |
脳機能に重要な役割を果たす海馬歯状回における神経新生に対する睡眠の調節メカニズムを明らかにすることが本研究の目的である。神経幹細胞(NSCs)は自己複製能及び多分化能を有する未分化な細胞であり、側脳室下帯および海馬歯状回に存在する。最近、NSCsは病的プロセスに対する再生機能だけでなく、脳の生理学的機能と密接な関係があることが明らかになってきた。そこで、本研究では睡眠に着目し、睡眠剥奪やその後の回復睡眠が成体ラット脳内の神経幹細胞の増殖に及ぼす影響をBrdU (bromodeoxyuridine)免疫染色法によって検討した。その結果、トレッドミルを用いた96時間の睡眠剥奪群では、海馬歯状回および側脳室下帯における神経幹細胞の増殖能に影響を及ぼさなかった。ところが、睡眠剥奪後に、6時間の睡眠を許すと(回復睡眠)、側脳室下帯における神経幹細胞の増殖能は変化しなかったが、海馬歯状回における神経幹細胞の増殖能は約2倍増加した。さらに、BrdU投与の2週間後に脳を還流固定して、ニューロンマーカーのNeuNまたはアストログリアマーカーのGFAPとBrdUの二重染色法によって、ニューロン新生やアストログリア新生に対する回復睡眠の影響を検討したところ、回復睡眠は海馬歯状回における新生細胞(BrdU陽性細胞)数を増加させていた。新生ニューロン数と新生アストログリア数の割合に対しては、回復睡眠は影響しなかった。以上の結果より、睡眠剥奪後の回復睡眠が海馬歯状回の神経幹細胞の自己増殖能を亢進し、ニューロン新生やアストログリア新生を増加させる作用のあることが明らかになった。
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