Research Abstract |
本研究では,主に神経芽細胞腫N1E-115細胞などの培養細胞への強制発現系を用い,メルトリンβによるグリア増殖因子ニューレグリンの脂質ラフトにおけるプロセシング活性を指標にその制御機構を明らかにすることにより,グリア増殖因子シグナルが神経筋結合部の形成と維持に果たす役割に関する知見を得ることを目的とした. 昨年度までに申請者は,メルトリンβを強制発現させた培養細胞を用いたパルスチェイス実験,培養下の後根神経節ニューロンを用いたメルトリンβと各種細胞内小器官に対する抗体染色により,メルトリンβが細胞内の脂質ラフト,「特にゴルジ装置膜においてニューレグリンをプロセシングすることを示唆する知見を得た.このことを直接的,かつ詳細に検証するため,超遠心分画怯を用いた小胞体,ゴルジ装置などの膜性細胞内器官における発現,およびニューレグリンプロセシング活性の検討を行った.さらに,野生型,あるいはプロテアーゼ活性欠損型メルトリンβを強制発現させた.COS7細胞に対し,アミノ末端に蛍光タンパク質を付加したニューレグリンを同時に強制発現させ,蛍光相関分光法による観察を行うことにより,メルトリンβによるニューレグリンのプロセシングの「場」がゴルジ装置膜であることを示すことができた(Yokozeki, T. et al.2007).メルトリンβと同様にADAMファミリーに属する膜型プロテーゼTACE(TNF-α converting enzyme)はニューレグリンをプロセシングするが,上記の解析系ではTACEはむしろ細胞表層におけるプロセシングに関わることから,プロテアーゼを細胞内の異なる領域に局在させることが増殖因子の放出を制御する機構のひとつとして想定できることが分かった. 上記に加えて,メルトリンβ欠損マウスの性状について報告することができた(Komatsu, K.,et al.,2007).
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