2005 Fiscal Year Annual Research Report
成熟ニューロンにおけるCdk5の役割:シナプス種特異的制御の分子機盤
Project/Area Number |
17700359
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
佐竹 伸一郎 生理学研究所, 生体情報研究系, 助手 (30360340)
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Keywords | Cdk5 / プルキンエ細胞 / 介在ニューロン / 登上線維 / 平行線維 / P / Q型電位依存性カルシウムチャネル / 放出確率 / roscovitine |
Research Abstract |
サイクリン依存性キナーゼ(Cyclin-dependent kinase : Cdk)は,細胞分化・増殖の制御に関わるタンパク質リン酸化酵素である。Cdkファミリーの一つCdk5は,成熟ニューロンの軸策や細胞体に特異的に強く発現することから,細胞周期の制御とは別の機能も担うと推定されている。しかし,Cdk5ノックアウトマウスは周産期致死のため,成熟ニューロンにおけるCdk5の役割は現在も明らかでない。シナプス伝達機構におけるCdk5の機能を検索するため,小脳スライスでパッチクランプ記録を行い,Cdk5特異的阻害薬roscovitineがシナプス伝達におよぼす影響を調べた。 2週齢ラットから作製した小脳スライスにroscovitineを灌流投与すると,介在ニューロン(籠細胞)-プルキンエ細胞間の抑制性シナプス伝達および平行線維-プルキンエ細胞間の興奮性シナプス伝達が顕著に増強した。一方,登上線維-プルキンエ細胞間の興奮性シナプス伝達にroscovitineは無効であった。薬理学実験や量子解析から,この阻害薬は,P/Q型電位依存性カルシウムチャネルの機能を強化して,神経伝達物質の放出確率を増大させることが示唆された(前シナプス性作用)。さらにroscovitineは,プルキンエ細胞から記録した抑制性シナプス後電流の減衰時定数(τ)や,tetrodotoxin非依存性の微小抑制性シナプス後電流の振幅を増大させた。Cdk5は,抑制性シナプスを後シナプス性に制御する役割も併せ持つと考えられる。Cdk5は,シナプス種依存的かつ複数のメカニズムにより,小脳皮質のシナプス伝達制御に関わることが示唆された。
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