2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17700368
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
久場 博司 京都大学, 医学研究科, 助手 (10362469)
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Keywords | 神経科学 / 生理学 / 音源定位 / シナプス / 同時検出 / チャネル / 周波数 |
Research Abstract |
両耳に到達する音の時間差は音源定位の1つの手がかりである.トリでは脳幹の層状核神経細胞(NL細胞)が両耳からのシナプス入力の同時検出器として働くことによりこの時間差が検出される.NL細胞は同時検出器として非常に高い精度をもつ.これまで申請者はNL細胞の同時検出精度及び細胞特性を特徴周波数(CF)領域毎に調べ,同時検出の精度が高-中間CF領域で高く,これはこの領域でKv1.2チャネルの発現量が多いことによりシナプス後電位の時間経過が加速されるためであることを明らかにした.本年度はさらに,NL細胞において樹上突起で発生したシナプス後電位が活動電位に変換される過程について調べ,以下のことを明らかにした. NLの高-中間CF領域の細胞では,活動電位が小さく,かつ細胞体膜からNa電流が記録されないことから,活動電位は細胞体から電気的に離れた軸索上で発生していると考えられる.そこで,免疫染色によりNaチャネルの分布を調べたところ,高いCF領域の細胞ほどNaチャネルは細胞体から離れた軸索上に短く集積していた.これらの所見は高いCF領域の細胞ほど活動電位が軸索上の細胞体から離れた場所で発生することを示している.さらに,NEURONを用いてNL細胞の活動電位発生部位がCF領域に応じて異なることの機能的意義を検討した結果,この違いは各CF領域の細胞が安定して発火し,正確な同時検出を行う上で重要であることを明らかにした.特に高いCF領域の細胞は高頻度のシナプス入力を受けるため,シナプス入力の時間的加重により細胞体で大きな持続的脱分極を生じる.この脱分極は軸索のNaチャネルを不活性化し,細胞の興奮性を減少する.このため高いCF領域の細胞は活動電位の発生部位を細胞体から離し,持続的な脱分極を軸索で電気緊張性に減少することにより,高い興奮性と正確な同時検出を実現すると考えられた.
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Research Products
(1 results)