2005 Fiscal Year Annual Research Report
発達期のシナプス伝達に対する内因性カンナビノイドシグナルによる調節機構
Project/Area Number |
17700371
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
前島 隆司 生理学研究所, 発達生理学研究系, 助手 (70399319)
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Keywords | 逆行性シグナル伝達 / 内因性カンナビノイド / カンナビノイド受容体 / 海馬 / 抑制性シナプス伝達 |
Research Abstract |
内因性カンナビノイドは、神経細胞のシナプスにおいて逆行性伝達を担うシグナル分子として働く。シナプス後細胞より、代謝型グルタミン酸受容体の活性化やカルシウム濃度上昇を引き金にして内因性カンナビノイドが放出され、シナプス前終末に存在するカンナビノイド受容体(CB1)の活性化を介してシナプス伝達物質の放出が抑圧される。しかしながら、このような神経細胞の活動に伴う"on-demand"なシグナル分子発生の様式に加え、新たな様式によるシナプス伝達の調節機構が存在することが示唆されている。すなわち、なんらかの要因によりカンナビノイド受容体が恒常的に活性化され、そのためシナプス伝達も恒常的に抑圧されていることが複数の系で報告されている。申請者らが、生後1-2週の海馬CA3領域から機械的に単離した錐体細胞について、ホールセル記録法によりTTX存在下で活動電位非依存性のGABA作動性シナプス電流(mGPSC)を記録したところ、興味深いことに低濃度(10nM)のCB1阻害剤(SR141716)投与によりmGPSCの発生頻度が著しく増大することがわかった。内因性カンナビノイド受容体の阻害剤は脂溶性であり、他のイオンチャネルへの副次効果であることも懸念されたが、CB2受容体特異的阻害剤(SR144528)ではmGPSCに変化が見られなかった。さらに、この恒常的なCB1受容体の活性化が、CB1受容体の構造的な活性化によるものか、内因性カンナビノイドの恒常的な作用によるものかを調べるため、逆アゴニスト作用を生じない阻害剤(O-2050)を投与したところ、SR141716と同様にmGPSCの増強作用が見られた。以上のことから、恒常的な内因性カンナビノイドの作用によるシナプス伝達の抑圧機構が存在していることが示唆された。
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Research Products
(4 results)