Research Abstract |
本研究は,血管平滑筋細胞の形状や配列状態を操作しつつ,細胞に対して力学刺激を加えながら内部構造変化を追跡することにより,細胞の形状や配列状態,細胞に加わる力が血管平滑筋細胞の形質転換にどのような影響を与えるか明らかにすることを目的として,2年間の研究を進めている. 本年度は,まず1)マイクロパターニングによる平滑筋細胞の形状および配列を制しつつ弾性膜上に培養する技術の確立を目指した.厚さ0.1mm程度のシリコーンシート表面に対して,ECRイオン照射装置を用いて酸素イオンを照射することにより,疎水性のシート表面の細胞親和性向上させ,十分な細胞接着性を得るための条件を確立した.さらに,一辺が数10□m〜数100□m程度の長方形や正方形の孔を有するシートメッシュをマスクとして利用し,細胞接着領域のアスペクト比,面積細胞間距離などを制御して,シリコーンシート上に細胞を培養する技術を確立するに至った. 次に,2)リアルタイム観察型力学刺激負荷試験システムの開発として,シリコーンシート上に培養した細胞に対し,繰返し引張刺激を加えながら細胞を培養しつつ,その形態や内部構造を顕微鏡下で観察する系を構築するため,市販の細胞用繰返し伸展装置に対して,温度制御部およびAir-CO2混合ガス供給部を作製して,細胞に引張負荷を加えながら顕微鏡下で長時間培養できるように改良した.この装置を用いて,1)にて得た200□m×50□m程度の長方形状にパターニングを施した培養平滑筋細胞に対し,その長軸方向に繰返し引張刺激を負荷したところ,細胞内のアクチンフィラメントが常に大きなひずみを受けているにもかかわらず,その配向を維持し,さらにその形成量も無負荷時に比べ増加することが分かった.今後,さらに細胞内の接着タンパク質の分布様態や平滑筋マーカタンパク質の発現状態の変化に注目して研究を進める予定である.
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