2005 Fiscal Year Annual Research Report
人工網膜移植における細胞外電流刺激波形の最適化:電気生理学実験と計算論的解析
Project/Area Number |
17700398
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
林田 祐樹 熊本大学, 工学部, 助教授 (10381005)
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Keywords | 人工網膜移植 / 哺乳類 / 網膜神経節細胞 / 細胞単離法 / 細胞外電流刺激 / パッチクランプ法 / 計算機シミュレーション / 白色雑音解析 |
Research Abstract |
近年"人工網膜移植"(網膜神経疾患患者に対し,眼球内網膜部の移植電極から生残する神経細胞を電気刺激により駆動し視覚機能を一部回復させる試み)の研究が注目され,米国では既に臨床試験が実施された。しかし先行研究で用いられた電気刺激は矩形波や正弦波の単純な波形であり且つその電流量が大きいため,連続的繰り返し刺激では電力消費,眼球内発熱,網膜組織に対する種々の負荷などが大きく場合に依っては生残する細胞までを死に至らせる恐れがある。そこで本研究は,網膜神経節細胞からの活動電位惹起に最も低消費電力で効率の良い電流刺激波形のテンプレート設計を目的とする。本年度の実施分により,1:世界で初めて網膜組織に対して"振動単離法"を適用し,実験試料であるラット網膜神経節細胞の,効率的且つ酵素を用いない単離方法を確立した。2:細胞の電気生理学的膜特性を穿孔パッチ全細胞記録法により計測し,試料有用性の確証を得た。3:副産物として,網膜では世界初,上記1の方法で前シナプス終末を付着結合させた単離細胞が得られることが分かった。[2006年4-5月米国"ARVO(視覚と眼科学研究協会)会議"にて採択済発表予定] 4:細胞外電流刺激に対する細胞内電位応答を計測した結果,in vitro系では世界で初めて,矩形波であってもその正極性及び負極性パルスの時間的な組み合わせタイミングを変えることで,活動電位惹起に必要な閾電流量の有意な低減が可能なことを見出した。[2006年9月英国"国際臨床神経生理学会"にて発表予定] 5:生物物理学的モデルに基づき計算機上に構築した仮想神経節細胞において,白色雑音波形の細胞外電流刺激に対する活動電位応答を元に"spike-triggered average"を導出しfirst-orderの最適刺激波形テンプレートを推定できた。以上により交付申請書記載内容を90%以上遂行できたと考える。
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