2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17700401
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Research Institution | Hiroshima City University |
Principal Investigator |
疋田 真一 広島市立大学, 情報科学部, 助手 (00347618)
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Keywords | VOR / スムーズパシュート / 眼球運動 / 視線 / 運動知覚 |
Research Abstract |
日常生活において頭部は頻繁に動揺するが,視覚のブレを感じることはほとんどない.頭部が上下左右に回転すると直ちにVOR(頭と同じ速度で逆向きに眼を回転させる反射)が働き,空間に対する視線の向きは一定に保たれる.VORは静止世界に対する視覚の安定化にきわめて有効であるが,視覚対象が運動している場合,頭を動物体と同じ方向に回転させるとVORは目標追跡を妨げるよう作用することになる.このことから,動物体追跡時にはVORの働きを抑制することにより目標追跡速度を高めている可能性は十分考えられる.本研究では,対象物の速度に応じてVORゲインを調節する機構の存在を明らかにするため,(1)広範囲にわたる目標速度(20〜100deg/s)に対する頭部静止時と能動回転時の視線速度,(2)暗中で静止あるいは運動目標を想起したときのVORゲイン(眼球速度/頭速度)について調べた. 左右に正弦波振動(0.8Hz)する視標に対して,比較的低速(20〜40deg/s)のときには頭部静止時と回転時の視線速度に顕著な差は見られなかったが,視標速度が増加する(40〜100deg/s)につれて頭部回転時の視線速度は静止時に比べて大きくなった.視標速度が100deg/sのとき,頭部回転時の視線速度は6名の被験者について平均70deg/sであったのに対して頭部静止時ではわずか51deg/sであった.これは,頭部能動回転時においてVORの働きが一部抑制されたことが原因だと考えられる.次に,暗中で静止目標を想起しながら能動的に頭部を回転させたときのVORゲインを調べたところ平均1.0であった.一方,運動目標を想起したときのVORゲインは平均0.8で,静止目標想起時に比べて有意に低下していた.以上のことから,視覚情報や記憶情報を通して形成された対象物の運動知覚に基づいてVORゲインを抑制する神経機構の存在が示唆される.
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