Research Abstract |
本研究では、医用画像から病変を自動的に検出・可視化できる画像診断支援システム(CAD : computer-aided diagnosis)を構築するために,3次元体幹部CT画像からの組織・臓器領域(肺野,血管,気管,肝臓など約30種類の領域)を,手動ではなくコンピュータで知的に完全自動認識する画像処理手順の開発を目的とする. 本年度は,約200症例規模の高解像度の体幹部CT画像を収集し,医師の診断結果を基づいて画像データの整理・分類を行った.これによって,CT画像,撮影パラメータ,病変の診断結果,および実験結果を含む全ての情報が電子化され,計算機で容易に検索ができるようになり,効率的に画像処理手順の設計・性能評価ができる環境を構築した.また,複雑な人体解剖学的な構造(複数の臓器組織から構成されている)を一つの木構造で定義し,各臓器領域の濃度(CT値)と複数の臓器の間の3次元相対的位置関係の分布を調査した.これによって,人体の解剖学構造を"電子地図"で表現する方法を検討し,初期的な実験を行った.具体的な例として,肝臓の電子アトラスの構成法を提案し,アトラスに基づく肝臓の自動抽出手順を開発した.そして,132症例のCT画像に適用した結果,128症例から肝臓の自動抽出が成功したことを確認した.また,肝臓領域の自動抽出結果(128例)は専門医により決めた真の肝臓領域と比較した結果,平均一致度は約92%であった.失敗(4例)の原因としてアトラスの構成するときに,病変による人体の解剖学構造の乱れを考慮していないと考える.以上の実験結果から,高精度な人体電子地図の生成により人体解剖学的な構造を自動認識する本手法の妥当性があると考える.
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