Research Abstract |
日常の生活において我々は一定のリズムで歩くことよりも、頻繁に止まったり、歩き始めたりなどのいわゆる過渡歩行を多用する。したがって、リハビリテーション応用を目的とした歩行研究においては、これらの過渡歩行に関する研究も重要であると考え,解析を中心に研究を行ってきた。その結果,本補助金申請時点で,過渡歩行パラメータが下肢機能レベルと関連があることが示された。 本研究では以上の点をふまえて,(1)引き続き,転倒を含めた身体能力と過渡歩行および足指把持力との関連性を示すデータの収集・解析,(2)床反力計を用いて作用点変動をリアルタイムに計測し,提示できるソフトウェアの開発,(3)理学療法士や医師の意見を元に,訓練システムの訓練プログラムの開発,(4)システムの評価と,訓練システムの効果の検証,を行う予定である。 本年度は(1)を中心に実施した。(1)においては,下肢障害者の一例として股関節疾患者のデータを測定した。歩行開始および通常歩行の2種類の床反力データを測定し,同時に身体各部の座標データ,大腿部の筋電データを測定した。被験者数は3月31日時点で股関節疾患者21名,比較対象として健常者22名で,今後もデータ収集を続ける予定である。歩行開始時の床反力作用点逆変動および関節モーメントの変動を中心にデータ解析を行った。床反力作用点逆変動については,健常者と股関節疾患者の間で有意な差が見られたが,その差は小さく,さらに検討の必要があると考える。関節モーメントのデータに関しては,歩行開始時の最大モーメントが疾患者では小さくなり,術前術後でも差が見られるなどのデータが得られた。 (2)については,データの収集・解析に時間がかかり,また,作用点変動と下肢機能の関連性について疑問も生じたため,年度内には十分な検討ができなかった。今後,これらの関連性について,十分なデータと検討を行い,具体的なシステムの提案を行う予定である。また,下肢訓練システムの実現については,今後も検討を続け,来年度中には目処をつける予定である。
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