2005 Fiscal Year Annual Research Report
脳波の位相同期・脱同期現象からみた知覚の統合と反応の生成過程に関する研究
Project/Area Number |
17700471
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山中 健太郎 東京大学, 大学院・教育学研究科, 助手 (90359662)
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Keywords | 脳波 / 位相 / 同期・脱同期 / 知覚の統合 / 意思決定 |
Research Abstract |
ヒトの日常生活における意思決定は、複雑で多様な感覚情報を処理し統合した上でなされている。近年、様々な脳機能計測手法により、感覚情報が脳内のどこで処理されるかは詳細に調べられてきたが、処理された感覚情報がどのように統合され、最終的な行動に至るかという点は未だ明らかではない。この問題を解くひとつの鍵として、脳活動の位相同期(synchronization)・脱同期(desynchronization)現象が注目を集めている(Varela et al. 2001,Ward 2003)。それゆえ、ヒトが感覚情報を統合した結果に基づいて反応するような課題を作成し、その課題を遂行中のヒトの脳波(EEG)の同期・脱同期現象を詳細に検討することが、この問題に対する有効な手法となる可能性がある。そこで本年度においては、(1)情報処理過程の詳細が明らかになっている視覚刺激を用い、「色」「形」「位置」「動き」の複数の情報を順番に呈示し、それに基づいて反応を選択させ遂行させることを段階的に行わせる課題を作成し、(2)その最中にヒトの脳波を64chで詳細に測定するシステムを確立し、(3)実際に約5名の被検者からデータを得た。現在、得られた脳波データから、従来行われてきた、(1)各電極内での試行間位相同期、(2)電極間での位相同期だけでなく、(3)試行内での複数周波数帯域間での位相同期も評価可能なデータ解析システムを構築中である。実際、最も簡単な認知反応課題であるGo/NoGo課題遂行中の脳波をこの解析システムを用いて分析した結果、β帯域での前頭部の電極間位相同期((2)に相当)が、Go反応の生成に伴って生じ、一方、α/β帯域での前頭部の位相同期((1)に相当)およびθ帯域-α/β帯域間の位相同期((3)に相当)がNoGo反応に伴って生じていることが明らかになり、この解析システムの有効性が示された。今後、この解析システムを用いて感覚情報の統合と、それに基づく意思決定についての詳細な検討を行う予定である。
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