Research Abstract |
有酸素性運動は,疾患や加齢による心臓・血管の機能低下を改善する効果がある。しかしながら,運動効果の機序にどのような分子レベルの調節が関与するのかは解明されていない。本研究は,運動に対する心臓・血管の応答及び適応機構に関してどのような分子レベルの調節が関与するのかを検討することにより,疾患や加齢による心臓・血管の機能低下を改善させる運動効果の分子メカニズムを解明する研究を計画し,実施進行中である。本研究にて,4週間あるいは8週間の有酸素性運動トレーニング(トレッドミル走;1日60分間,週5日)を行わせたラットの心臓および血管から抽出したRNAを用いて,Microarray法により4,000遺伝子の発現変動を網羅的に解析した。心臓において,4週間の運動トレーニングでは,運動による適応は認められなかったが,8週間では,心重量/体重比の増加,心エコー測定による左室壁厚の増大,心拍数の低下が認められ,スポーツ肥大心が生じていることが示された。このときの心臓での遺伝子発現は,75遺伝子(増加33,低下42)が変化しており,glycogen synthase kinase-3β,Cain, endothelin-1といった遺伝子が適応機序に関与している可能性を示した(Iemitsu M et al.,2005)。さらに,大動脈においては,4週間の運動トレーニングでは,動脈伸展性の指標である大動脈脈波伝搬速度が低下しており,動脈伸展性が亢進していた。このときの血管伸展性関連遺伝子の発現変動は,29遺伝子(増加24,低下5)あり,prostaglandin EP2とEP4 receptor, C-type natriuretic peptide, endothelial nitric oxide synthaseといった遺伝子が適応機序に関与している可能性を示した(Maeda S, Iemitsu M et al., 2005)。
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