Research Abstract |
左室後負荷は,動脈コンプライアンス(血圧や血流の拍動の緩衝作用)が小さいほど,また末梢血管抵抗が大きいほど大きい.安静時の左室後負荷に対する貢献度は,動脈コンプライアンスで末梢血管抵抗に比べて小さい.しかしながら,加齢に伴って動脈コンプライアンスは低下する.本研究では,運動時の動脈コンプライアンスと,左室後負荷に対する動脈コンプライアンスの貢献度に,加齢が及ぼす影響を検討するため,若年齢者(20歳代)および中高年齢者(60歳以上)を対象に,運動(自転車こぎ,20W,4分間)時の動脈系コンプライアンスを測定した.若年齢者に比べて,中高年齢者の動脈系コンプライアンスは低い値を示した.さらに,中高年齢者を2群に分けると,60歳代に比べて,70歳以上では動脈系コンプライアンスは小さかった.中高年齢者においては,運動時の動脈系コンプライアンスが小さいほど運動時の左室後負荷(動脈エラスタンス)の増大率は大きかったが,若年齢者においては,両者の有意な関連は認められなかった.また,中高年齢者において,運動時の動脈系コンプライアンスは小さいほど左室の負荷量(ダブルプロダクト[収縮期血圧×心拍数])は大きかったが,両者の相関関係は60歳代に比べて,70歳以上で大きかった.中高年齢者を動脈系コンプライアンスにより6群に分けて運動時のダブルプロダクトを比較すると,上位3群では有意差は認められなかったが,下位3群では動脈系コンプライアンスの低下に伴ってダブルプロダクトは増大した.以上の結果は,加齢に伴い,運動時の動脈コンプライアンスは低下すること,および動脈コンプライアンスの左室後負荷に対する貢献度は大きくなることを示唆する.
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