Research Abstract |
安静時の左室後負荷としての動脈負荷(実効動脈エラスタンス,Ea)に対する貢献度は,末梢血管抵抗(R)が動脈コンプライアンス(C)に比べて大きい.本研究では,運動時には左室エラスタンスとEaとの整合性を保つため,CのEaに対する貢献度は増大し,主にCの低下によりEaは増大するという仮説を設定した.本研究の目的は,運動時におけるCとRのEaに対する相対的な貢献度の変化を明らかにすることである.45人の若年男性を対象に,安静時と定常負荷運動時に,左室1回拍出量(超音波ドップラー法)および動脈血圧を測定して,Ea,C,Rおよび心周期時間(T)を算定した.Cは運動強度の増大に伴い顕著に低下した.R/Tにおける変動の幅はCに比べて小さかった.Eaは40%では有意な変化は認められなかったが,60%および80%では運動強度に応じて増大した.以上の結果より,運動時のEaの増大は主にCの低下によるものであり,運動時には,左室後負荷に対するCの相対的な貢献度は増大すると考えられた.一方で,高齢者における検討では,安静時のCが一定よりも低い場合,運動時のCの低下やEaの増大が過度になってしまい,左室の収縮力を規定してしまう可能性も示した.加齢以外に運動トレーニングによっても安静時のCは変化する.本研究においても,安静時のCは持久性スポーツ選手(中・長距離ランナー)では高く,筋力系スポーツ選手(ハンマー投げ選手等)では低いこと,および後者には血管内皮細胞由来の血管収縮性物質であるエンドセリン-1が関連する可能性を示した.最終年度では,安静時のCが大きい(もしくは小さい)これらのアスリートにおいて,運動時のEaに対するCの貢献度について検討を進める予定である.
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