Research Abstract |
平成18年度は慢性疲労と抑うつを規定する要因として主にIRTによる疲労自覚症状の評価と平衡機能における神経機能の評価を中心に研究を展開した.以下,IRTによる疲労自覚症状の評価に関する研究結果について概要を述べる. 青年用疲労自覚症状尺度(SFS-Y)の項目反応理論による尺度化(IRT尺度化)による各項目の識別力と困難度のパラメタ値を推定することを主たる目的にするとともに,多母集団ロジスティックモデルによる性差を検討した.福井県の全ての高校に調査を依頼し,調査を実施した(有効回答2944名).疲労自覚症状の調査は青年用疲労自覚症状尺度SFS-Y(Subjective Fatigue Scale for Young adults)を利用した.同尺度は6つの下位尺度(集中思考困難,だるさ,活力低下,意欲低下,ねむけ,身体違和感)24個(4項目×6下位尺度)の質問項目で構成される.反応カテゴリは直近の一週間において,項目内容を自覚したか否かの2件法で,自覚した場合に1,自覚しなかった場合に0を与えた.IRTのモデルには2パラメタロジスティックモデルを採用し,周辺最尤法により項目困難度と項目識別力を推定した.尺度は対象母集団の特性尺度値の分布の平均が0.0,標準偏差が1.0となるように原点と単位を設定した.性差の検討は多母集団ロジスティックモデルに基づき検討した. SFS-Y24項目における項目識別力パラメタの推定は「全身がだるくなる」が最も高い値を示し,「無口になっている」が最も低い値を示した.極端に低い識別力を示す項目は認められず,全体として十分な識別力を示している.一方,困難度パラメタの推定は,「話をするのが嫌である」が最も高い値を示し,「集中力がない」が最も低い値を示した.24項日中20項目が負の値を示し,本研究の対象者において自覚する頻度の高い質問項目が多いと考えられる.また,テスト情報曲線から,SFS-Yは各疲労自覚症状に対する自覚感が比較的弱い者に対してより効果的な尺度であることが推察される.各項目のパラメタ推定値で極端な値は認められず,SFS-YのIRT尺度化が可能と判断された.また,困難度母数の性差の比較結果,「無口になっている」と「ねむい」の2項目は,0.5以上の差が認められ,女子は無口になりにくく,ねむくなりやすい傾向が窺えた.
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