2006 Fiscal Year Annual Research Report
両親の夫婦間不和と青年のアイデンティティ発達に関する実証的研究
Project/Area Number |
17700543
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
宇都宮 博 立命館大学, 文学部, 助教授 (10320152)
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Keywords | 青年 / アイデンティティ / 両親間葛藤 |
Research Abstract |
本研究の目的は、「青年期のアイデンティティ形成と両親の夫婦間不和の関連性」と、「青年期のアイデンティティ形成と原家族からの巣立ちのトランザクション・プロセス」を明らかにすることである。2年目の平成18年度においても、両親間葛藤に関する青年の認知尺度を開発するため、新たな対象者に質問紙調査が実施された。2年分のデータをもとに分析を行い、両親間葛藤尺度と両親間葛藤反応尺度が作成された。前者は、「葛藤の頻度」と「葛藤への子ども関与期待」の2因子構造が、一方後者は「情緒的衝撃」、「罪悪感」、「翻弄」、「自己効力感」の4因子構造が示された。いずれも、内的整合性と安定性の観点から、高い信頼性が確認された。構成概念妥当性については、父母双方のコミュニケーション態度との関連などから検証された。さらに、青年の両親を対象とする質問紙調査が前年と同様に実施され、青年と父母間の対応に着目した分析からも、両親間葛藤尺度と両親間葛藤反応尺度の有効性が示唆された。この2つの尺度のうち、アイデンティティ形成とより強い結びつきにあったのは両親間葛藤反応尺度であった。とりわけ「罪悪感」による否定的影響が注目された。最終年度では、これまでに得られた知見をふまえ、両親間葛藤へのとらわれや父母からの葛藤介入への期待の認知が、青年の原家族からの巣立ちやアイデンティティ探求にいかなる影響力を有するかについて、半構造化面接を用いて質的に検討していく予定である。
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