Research Abstract |
ヒトの感じる食品の味・おいしさは,種々の要素によって構成されている.その基本となるのは,5基本味と呼ばれる甘味,酸味,塩味,苦味,うま味であり,これまでに報告されている味覚センサの研究においてもこれらの味溶液に対する脂質膜の電気・光学的応答から検出・識別を行っている.申請者もこれらの溶液を基準的な溶液として用いた.また,数種類の味を混合すると,味の種類や組み合わせによって,互いに強め合ったり,弱め合ったりする味の相互作用が知られている. 以下に本年度得られた結果をまとめる。 甘味(Sucrose)溶液と塩味(NaCl)溶液の単一溶液,さらにこれら単一の溶液を一定の比率で混合した溶液の種類に応じて,音速,振幅,周波数特性に差異のあることを確認した.本年度はパラメータを一つ追加し,減衰による評価も可能であることを示すことが出来た.また,これらの音響特性に対してソフトコンピューティング処理を行った.まず,液体中を伝搬する第2反射波の周波数特性のデータに対して自己組織化ニューラルネットワークを適用したところ,混合比の異なる溶液を視覚的に判別できることを見出した.次に,距離型ファジィ推論を今回新たに用い,混合溶液の混合比を自動推定する手法を提案し検討を行った結果,溶液の混合比に近い値を示した.これまでに,超音波の伝搬波形とファジィを組み合わせ,混合比を推定する研究の報告例は非常に少ないため,有益なデータを取得できた.以上,混合溶液の超音波計測とニューラルネットワークとファジィを組み合わせた味センシングの有効性とその可能性の一端を示唆した.
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