Research Abstract |
本研究課題では,協調学習において学習者の視点に基づいた他者情報を学習者に提示するため,学習者の視点に基づいた他者の理解状態のモデル化を目的としている.学習者が有用だと思う他者の情報を推測して動的に提示することで,特定の他者に対する注目を容易にする. 本年度はまず,学習者が他者をモデル化する要因を特定した.協調学習では発言をもとに学習が進行するため,他者の発言箇所に対する理解状態は発言の種類から推測できる.また,協調学習では全ての学習者が自身の理解状態を詳細に発言するわけではない.発言されなかった知識の理解状態は,知識間の関連と,発言された知識の理解状態から推測可能である.これらの分析をもとに,問題の知識間の関連を表した解導出ネットワークと,発言の種類による理解状態の分類を提案した. 解導出ネットワークは,解の各導出段階をノード,順序をリンクで表現したベイジアンネットワークである.個々のノードは,前のノードとの関連性を確率変数で保持する.すなわち,確率が高ければ学習者が前のノードを理解しているときに自身を理解している可能性が高いことを示す. 協調学習にて発言が生じると,発言の種類に応じた理解状態に基づいて,発言対象となる知識の理解状態が計算される.さらに,解導出ネットワークを基に,発言対象となるノードと関連する他のノードの理解状態を順に計算することで,発言の聞き手である学習者の他者への理解状態を推測できる. 本年度はまた,上述した機能を含んだ協調学習環境を構築した.対話手段としてチャットを用意し,チャットへの入力の種類をもとに各学習者の他者への理解状態を推測した.研究室内の学生による評価実験より,発言された知識に関する理解状態はある程度正確推測できた.しかし,関連する知識の理解状態は学習者によって異なるため,学習者によってシステムの推測した結果の効果が異なることが明らかになった.
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