Research Abstract |
本研究課題では,協調学習において,学習者の意識に応じた他者の情報取得を支援するインタフェースの構築を目的としている.昨年度は,対象を数学問題に限定し,学習者の視点からの他者の理解モデルを構築するため,ベイジアンネットワークを用いて他者の問題の導出ステップの理解傾向を表現する手法を提案した. 本年度は,学習者同士が何度も共に協調学習する状況に対処するため,以前の協調学習経験を反映したベイジアンネットワークの個別化手法を提案した.ベイジアンネットワークは,解を構成する導出ステップをノード,導出ステップの順序関係をリンクで表現しており,学習者の導出ステップの導出可能性を条件付き確率値で表現している.個々のノードを表す導出ステップは,一般的な数学の知識を問題に応じて具体化したものであるとみなすことができる.したがって,個々の学習者の一般的な知識に対する理解状態を学習者のドメイン知識モデルとして蓄積し,協調学習時に構築された理解モデルを用いてドメイン知識モデルを特定する.そして,学習者が最後に一緒に学習した時点のドメイン知識モデルを参照して,ベイジアンネットワークの条件付き確率値を設定する手法を考案した.研究室内の学生による評価実験により,提案手法を用いて構築されたベイジアンネットワークによって推定された他者の理解モデルは,学習者の他者に対する意識をより正確に表現しているという結果が得られた. 次に,構築された他者の理解モデルと,学習者自身の理解状態をもとに,学習者の注目対象者を推定する機構を構築した.学習者自身の理解状態は,学習者の個別学習ウィンドウ中の記述と,問題ごとに設定されたキーワードを比較することで判断した.学習者は自身が理解していない導出ステップを理解している他者に注目することが多い.そこで,学習者の理解状態に応じて問題の導出ステップに重要度を自動的に設定し,学習者の理解していない導出ステップとその周辺の導出ステップをより理解していそうな他者を注目対象者として特定する手法を考案した.また,特定された注目対象者の個別学習ウィンドウを自動的に取得して学習者に提示するインタフェースも構築した.
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