2005 Fiscal Year Annual Research Report
小笠原諸島において水文気候条件が植生構造に与える影響に関する観測研究
Project/Area Number |
17700640
|
Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
吉田 圭一郎 横浜国立大学, 教育人間科学部, 講師 (60377083)
|
Keywords | 小笠原諸島 / 夏季乾燥期 / 乾性低木林 / 観測研究 / 蒸散流 / 水文気候条件 / 葉の水ポテンシャル / 幹生長量 |
Research Abstract |
本研究の目的は,小笠原諸島父島の乾性低木林を調査対象に,詳細な気象観測に加え,植物の生理生態的プロセスの観測を新たに展開することで,既存の研究(例えば,吉田ほか,2002など)では明確にされてこなかった水文気候条件と植生構造との因果関係を明らかにすることである. 平成17年度は以下の3点について調査および研究を行った. 1.既存研究のレビュー 小笠原諸島を対象とした観測研究について,これまでの研究成果をレビューし,今後の課題をまとめた.小笠原諸島では最近20〜30年に気候の乾燥化が顕著であり,その植生に対する影響を多くの研究者が危惧していることが分かった.このような気候変動による植生へ影響を明らかにするためにも,早急に水文気候条件と植生構造との因果関係を把握する必要があることを確認した. 2.幹生長量の連続観測 水文気候条件の異なる2地点(初寝山および東平観測点)において,乾性低木林の優占種であるシマイスノキを対象にデンドロメータを設置し,幹生長量の季節変化を観測した.その結果,両者に幹生長量およびその季節変化パターンには差異がみられた.乾燥しない場所(東平)では夏季乾燥期に幹生長がみられるのに対し,乾燥する場所(初寝山)では夏季乾燥期を避けるような幹生長の季節パターンが観測された. 3.植物の水ポテンシャルの測定 夏季乾燥期であった2005年8月に,初寝山および東平観測点に生育するシマイスノキの葉のサンプリングを行い,実験室にて葉の水ポテンシャルを計測した.その結果,初寝山の方が東平に比べ,夜明け前のシマイスノキの葉の水ポテンシャルが有意に低かった.このことは,初寝山に成立する乾性低木林が,水文気候条件の差異を反映して,夏季乾燥期により強い乾燥ストレスを受けていることを示す.
|