Research Abstract |
本研究では,地質が比較的均質とみなせる四国の河川流域を例として,比較水文学的手法を用いた流域分類と,セル分布Kinematic Wave流出モデルを組み合わせた,流量未計測流域の流量予測手法を提案した.まず,四国管内の14の流量観測所の流域の中から,DEMのみから求めた地形特徴量が似ている流域を一組抽出した.次に特徴の似ている流域の一方に,流出モデルを適用して観測流量を再現した.そして,構築した流出モデルのパラメーターを用いて,もう一方の流域の流量予測を行った. 流域の分類の結果,対象流域の地形は,地形の険しさ,流路ネットワークの構造,流域の平坦さ,低次流路の発達状況,流域形状の細長さを5個の因子で説明できた.また,対象流域の中でもっとも地形の特徴が似ている流域は,石手川湯渡および土器川常包橋の流量観測所の流域であった.常包橋での降雨-流出解析では,Nash-Sutcliffe係数は81.1%と良い結果を示したが,このときのパラメータを用いた湯渡での流量予測は,Nash-Sutcliffe係数が-393.2%であった.しかし,常包橋及び湯渡に特徴の似ている中筋川磯の川流量観測所の流域での流量予測は,Nash-Sutcliffe係数が68.6%であった 湯渡での流量予測は,Nash-Sutcliffe係数は良い結果ではなかったが,この原因として,湯渡より上流にあるダムの影響が考えられる.その一方,湯渡のハイドログラフの推定値の位相は,観測値とほぼ一致した.これは流路ネットワーク構造が常包橋と似ているためと考えられる.また,湯渡、磯の川とも,観測値に比べて値が大きくなったが,これは常包橋に比べて地形が平坦であるため,斜面勾配が小さく流出モデルの土層厚が適合せず,流量が過大になるためと考えられる. これらから,地形特徴量で流域を分類することにより,水平的な地形特性である流路ネットワーク構造はハイドログラフの位相に影響を及ぼし,垂直的な地形特性である地形の険しさが流量のピークに影響を及ぼすという知見が得られた.また,本研究で提案した方法は,もっとも地形の似ている流域以外でも,類似度の近い流域に対して,流量を予測することのできる手法であることが確認できた.
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