2005 Fiscal Year Annual Research Report
海洋への微量金属の散布による植物プランクトン産有機物のサイズと生分解性への影響
Project/Area Number |
17710008
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
宗林 留美 (福田 留美) 静岡大学, 理学部, 助手 (00343195)
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Keywords | 微量金属 / 微生物 / 有機物分解 |
Research Abstract |
高分子化合物の取り込み機構を持たないバクテリアや植物プランクトンなどの微生物にとって、細胞外加水分解酵素による高分子化合物の断片化は必要な栄養素を得るための重要なプロセスである。単離されたバクテリアなどの培養から、細胞外加水分解酵素には活性中心に亜鉛などの微量金属イオンを含むものが多数報告されているが、海洋で機能している加水分解酵素と微量金属の関わりを直接示した例は殆どない。そこで、海水中の溶存の鉄イオン濃度が低いことが報告されており、他の微量金属濃度も低いことが予想される中部太平洋(西経160度、南緯10度〜北緯53度)において、表層海水に微量金属イオン(亜鉛・マンガン・コバルト)を添加し、細胞外加水分解酵素の変化を調べた。 その結果、3種の細胞外加水分解酵素(アミノペプチダーゼ、β-グルコシダーゼ、アルカリホスファターゼ)で、亜鉛・マンガン・コバルトを同時に添加した系においてのみ活性の上昇が見られ、中部北太平洋の細胞外加水分解酵素が複数の微量金属によるcolimitationの状態にあることが示唆された。また、実験を暗所で行った場合に植物プランクトン生物量の指標であるクロロフィルa濃度の低下が確認されたが、亜鉛を同時に添加した系では無添加に比べて減少の程度が半減した。このことから、亜鉛が植物プランクトンのアポトーシスの抑制に寄与している可能性が考えられた。一般に、海水中の溶存亜鉛濃度は表層で低く深度と共に高くなる傾向があることから、この結果は有光層下の沈降フラックスと生物ポンプの維持に亜鉛が関与しているという新しい仮説を示した。
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