2005 Fiscal Year Annual Research Report
三峡ダムと長江分水プロジェクトが東シナ海の海洋環境に及ぼす影響に関する研究
Project/Area Number |
17710014
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
郭 新宇 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 助教授 (10322273)
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Keywords | 環境変動 / 三峡ダム / 東シナ海 / 南水北調 / 長江 / 渤海 / 栄養塩 / 黄河 |
Research Abstract |
研究代表者が持っている既存の数値モデルは黒潮の季節変動に着目して設計されたために、河川流量の影響は塩分を月平均値に緩和させる方法で対応している。今年度でこの部分を改良し、長江と黄河の河川流量を直接的にモデルに導入し、渤海、黄海と東シナ海の塩分の季節変化を再現してみた。モデルを駆動する外力として月平均の風応力、熱フラックスと海面水温を使用している。また、計算領域内に大きな川が4つあることから、これらの月平均の河川流量をモデルに導入した。外洋との境界では、既存モデルの月平均結果に加えて、潮汐を新たに入れている。計算は既存モデルの冬の結果からスタートし、2年間を積分し、2年目の結果を計算結果として保存し、解析を行った。塩分の水平分布に4つの河口付近で顕著な低塩分水が見られる。そのうち、長江河口付近では30psuより低い塩分を有する低塩分水が岸の近くに留まらず、済州島付近や台湾海峡にまで及んでいる。また、この低塩分水の分布は季節によって大きく変化している。この計算結果は過去の計算結果や観測結果とよく似ていることから、本モデルを用いて三峡ダムと長江分水プロジェクトの影響を調べることができると判断した。現在、過去50年の海況再現実験の計算を行うとともに、長江水量の変動に対するモデルの応答実験も実行中である。 栄養塩変動に関して、過去30年間に気象庁の東シナ海での観測データを解析し、東シナ海大陸棚上の栄養塩濃度が減少していることが分かった。それに対して、長江を代表とする陸起源の栄養塩供給量は増加していることから、この減少傾向は外洋域に原因があると推測できる。原因の詳細は今後数値モデルで調べる必要がある。現在、栄養塩濃度の減少により、大陸棚への外洋起源の栄養塩フラックスに与える影響について解析中である。
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