Research Abstract |
干潟上の大気・陸面・海洋相互作用に伴う,熱・物質輸送のメカニズムを解明することを目的として,熊本港北側の干潟域に設置してある自動気象観測塔で乱流フラックス観測を実施した. 乱流フラックス観測より得られる,風速・気温などの乱流統計量の特性を解析した結果,海風条件では,干潟の干出・冠水時のいずれもMonin-Obukhovの安定度スケールと良い関数関係が見られた.一方,陸風条件では,陸域・干潟・海水上に生じる乱流統計量の水平傾度による,移流・拡散の効果が無視できない結果が得られた. 干潟上のエネルギーフラックスは,干出時刻および継続時間に応じ,地表面温度の加熱率が支配されることにより,顕熱フラックス・潜熱フラックス共に昼間の増加量が支配されることが明らかとなった.日没直後2-3時間は,大気側へ100Wm^<-2>を超える潜熱フラックスが観測された.赤外線サーモグラフにより,8月の晴天日を対象として,干潟上の地表面・海水面温度の時空間分布を観測したところ,干出直後から1時間に5℃以上地表面温度が上昇し,砂連や巣穴などの微地形によりパッチ状の水溜まりが作られることにより,±1.5℃以上の温度の偏差が現れることが確かめられた.干出時の顕熱・潜熱フラックスの増大は,測定点近傍の地表面温度の加熱効果が非常に重要であることが確かめられた. 二酸化炭素フラックスは,夜間には大気側への正のフラックス,昼間の冠水時に海水側への正のフラックスが観測される傾向にある.日積分値で収支を求めたところ,4月から5月の春先には,干潟・海水側に吸収され,定生動物が活発となる夏季では,大気側への正の輸送が行われる傾向にあることが明らかとなった.また,本研究費で購入した土壌呼吸測定装置を,干潟の干出時のみに設置して自動測定できるように,チェンバーを新規作成し,土壌呼吸観測を開始した.
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