2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17710025
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
樺島 博志 東北大学, 大学院・法学研究科, 助教授 (00329905)
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Keywords | 水俣病 / 環境法 / 法哲学 / 法の失敗 / 法と経済学 |
Research Abstract |
本年度は新潟水俣病事件発生40周年にあたった。研究の端緒として新潟での実地調査を実施した結果,新潟水俣病事件と熊本・鹿児島県における水俣病事件との間の社会的・政治的連関が明らかとなった。新潟では,新潟水俣病第一次訴訟弁護団幹事長,坂東克彦弁護士への聞き取りを行い,同弁護士により現地検分を実施してもらい,資料提供をうけた。坂東弁護士の所蔵する貴重な映像資料の調査のため,同弁護士の協力を得て,熊本県水俣市にて,水俣病市民会議の日吉フミコ,松本勉氏,第一次訴訟原告団の坂本フジエ,浜元仁徳,上村好男氏らへのインタヴューを行った。さらに,新潟における40周年シンポジウムにおいて,パネリストの原田正純熊本学園大学教授らへの質疑を行った。とくに現地調査および聞き取り調査においては,8mmビデオにより調査内容を記録した。事件発生50年を経て,関係者の高齢化と事件の風化が危ぶまれる中,事件に中心的にかかわってきた関係者からの協力を得ることができ,重大な社会的事件としての水俣病事件について将来に伝えるべき資料と研究の基礎を獲得できた。しかし本年度で調査収集できた資料はごく限られたものであり,来年度さらに調査を継続しつつ,資料の散逸を防ぐ方法を確立しなければならない。 このように本研究では,訴訟事件としての理論研究にとどまらず,事件の社会的政治的側面を視野に入れた調査を行っている。すなわち,水俣病事件は,関西訴訟最高裁判決をはじめとする判例研究において重要な意義を持つだけではなく,公害という社会紛争に対する法的解決の制度的問題点を検証するという意味で,社会的政治的側面を合わせて解明しなければならないと考えられる。このような観点から,本年度の研究成果として論文「法の失敗-水俣病発見50周年に寄せて」を纏め,来年度6月に学会発表および論文公表の予定である。
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