2006 Fiscal Year Annual Research Report
微生物を用いた放射性ヨウ素の土壌吸着モニタリングシステムの構築
Project/Area Number |
17710043
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
天知 誠吾 千葉大学, 園芸学部, 助手 (80323393)
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Keywords | ヨウ素 / 土壌 / 放射性ヨウ素 / 吸着 / 微生物 / 酵素 / モニタリング / ラッカーゼ |
Research Abstract |
1.ヨウ素の土壌吸着に与える各種条件の検討 前年度の研究結果より、土壌へのヨウ素の吸着は滅菌、嫌気処理、還元剤の添加により強く阻害されること、また抗生物質の添加には全く影響を受けないことがわかった。引き続き、ヨウ素の吸着に及ぼす各種条件の検討を行ったところ、シアン化カリウム(KCN)、アジ化ナトリウム(NaN_3)の添加により吸着が強く阻害されることがわかった。EDTAやカタラーゼによる阻害は少なかった。以上の結果から、土壌へのヨウ素の吸着には微生物由来の酸化酵素、特にオキシダーゼが関与していると考えられた。ヨウ素オキシダーゼによりヨウ化物イオン(I^-)は分子状ヨウ素(I_2)または次亜ヨウ素酸(HIO)となり、これが土壌粒子や有機物に吸着するものと推察された。 2.微生物由来ヨウ素酸化酵素の特質の解明 土壌へのヨウ素吸着の評価には、上記のヨウ素オキシダーゼの機能の解明が必須と考えられた。しかしながら、ヨウ素酸化能を有する土壌微生物の分離は集積培養などの工夫を加えても非常に困難であった。そこで、既に報告者が海洋環境から分離していたヨウ素酸化細菌Q-1株より、ヨウ素オキシダーゼを電気泳動的に単一になるように精製し、分子量、等電点、至適pH、至適温度、K_m、V_<max>、N末端アミノ酸配列など生化学的特質について明らかにした。ヨウ素オキシダーゼは分泌性の銅タンパクであり、その活性はKCNやNaN_3で強く阻害された。また、ヨウ素オキシダーゼはカテコールやABTSなどラッカーゼの基質に対する酸化能も有していた。このことから、ヨウ素オキシダーゼはラッカーゼの1種であると結論づけられた。 3.考察および今後の展望 上記2の結果より、微生物から初めて分離・精製されたヨウ素オキシダーゼがラッカーゼの1種であることが初めて明らかになった。トレーサー実験においてヨウ素の吸着が嫌気条件、還元剤、KCN、NaN_3などに強く阻害されることを考えると、ヨウ素の土壌吸着にもラッカーゼが関与している可能性がある。よって次年度は土壌中のラッカーゼ活性とヨウ素吸着能の相関を評価し、ヨウ素の土壌吸着モニタリングシステムの確立を目指す。
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