Research Abstract |
本研究は,希少資源を消費することなく高性能で環境安全性の高い吸着材(複合含水酸化物)を開発することを目的に,クラーク数で上位に位置する3種類の金属元素を組み合わせた三元素系複合含水酸化物を合成し,水質浄化材料としての適用を目指した。平成17年度は,ケイ素(Si),アルミニウム(Al),鉄(Fe),マグネシウム(Mg)の4種類を選択し,これら金属元素の種類と組成比を変えてSi-Al-Mg系試料とSi-Fe-Mg系試料を合成した。先行的にSi-Fe-Mg系試料の構造解析と吸着特性を評価した結果,Si-Fe-Mg系複合含水酸化物試料は各種有害イオンの除去材料として使用できる可能性が高いことが示された。詳細は以下の通りである。 1.【Si-Fe-Mg系試料の構造特性】合成した試料の成分組成を求めた結果,予定した組成比とほぼ一致しており,安定して試料を合成できることが分かった。また,粉末X線回折,熱重量-示差熱分析の結果より,試料は全体的に非晶質であったが,Mg比の高い試料は低結晶性のハイドロタルサイト様化合物に類似した特徴を有していた。 2.【Si-Fe-Mg系試料の吸着特性】有害イオン(フッ化物,ホウ酸,ヒ酸,亜ヒ酸,セレン酸,亜セレン酸,リン酸,アンモニウム,鉛,カドミウム)を対象に,Si-Fe-Mg系試料の基礎的な吸着能力をバッチ法により評価した。その結果,各種イオンに対する吸着速度は速く,概ね24時間で吸着平衡に達した。Mg比の高い試料ほど陰イオン吸着性に優れ,Si比が高い試料ほど陽イオン吸着性に優れた。さらに,Fe比が高い試料では特にヒ酸,亜ヒ酸,リン酸イオンを選択性に吸着することが明らかになった。これより,組成比の制御(組成変換)により特定イオンに対する吸着能力を向上できる可能性が示された。
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