2005 Fiscal Year Annual Research Report
接合界面における競合する電子相による新規物性の理論的研究
Project/Area Number |
17710072
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
森 道康 東北大学, 金属材料研究所, COEフェロー (30396519)
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Keywords | 超伝導 / 強磁性 / ジョセフソン効果 / qubit / pi-state / トンネルハミルトニアン |
Research Abstract |
近年、超伝導/強磁性体/超伝導(SC/FM/SC)接合におけるJosephson効果の研究が理論・実験の両面から盛んに行われている。中でも、SC/FM/SC接合において現れるπ状態を用いた量子ビット実現に向けた研究が注目されている。π状態とは、従来のJosephson接合(0状態)の電流-位相特性から位相がπずれた状態である。この現象は、超伝導と強磁性という異なった電子相の接合で現れる新しい現象である。本研究では超伝導体と強磁性体の界面に障壁がある場合を考え、トンネルハミルトニアンを用いて、SC/FM/SC接合におけるJosephson臨界電流(Ic)の定式化を行った。そして、強磁性体中の乱れの効果や磁気揺らぎの効果を考慮して0状態とπ状態が出現する条件を示した。まず、IcはFMの膜厚に対して符号を変えながら振動減衰することが分かった。そのため、FMの膜厚を変えることで0状態とπ状態の移り変わりが起こる。その振動周期はFM中の磁化の大きさ(hex)、磁気的散乱長(ls)、および超伝導秩序ギャップ(Δ)に依存する。これらの物理量は温度に依存するため、膜厚を0状態とπ状態の移り変わりが起こる境界付近に固定すると、温度によって0状態からπ状態への移り変わりが起こる。hexの温度変化がΔの温度変化よりも大きい場合(hex>Δ)、振動周期は温度とともに長くなり、Icは温度の関数として負から正の値に変化しπ状態から0状態への転移が起こる。一方、Δの温度変化が支配的(hex<Δ)な場合、振動周期は温度とともに短くなり0状態からπ状態への転移が起こる。このように、温度による0状態からπ状態への移り変わりは、どのような超伝導体と強磁性体の組み合わせを選ぶかによって異なることが分かった。
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Research Products
(2 results)