Research Abstract |
1.有機-無機複合錯体[Cu(4,4'-bipyridine)_2(CF_3SO_3)_2]_n(以下,CuBOTf)への水素同位体(H_2,D_2)の吸着等温線を40Kおよび77Kにおいて測定した。また,Feynman-Hibbsの有効ポテンシャルを適用したグランドカノニカルモンテカルロ(FH-GCMC)シミュレーションによって水素同位体吸着等温線を計算し,実験結果との比較検討を行った。XRPD測定により解析したCuBOTfの原子構造をシミュレーションモデルとして用いたところ,実験結果(77K)と良い一致が得られたことから,CuBOTfの結晶構造が比較的精度良く決定できたものと考えられる。また,実験により得られた水素吸着等温線(77K)は,常に重水素よりも小さくなり(約13% at 0.1MPa),量子効果が顕著であることがわかった。また,FH-GCMCシミュレーションは,この傾向を良く再現しており,水素同位体の平衡吸着量の差が量子効果によるものであることをサポートすると同時に,量子分子篩による重水素分子の分離能が確認された。一方,40Kでは低圧領域において,実験とシミュレーション結果とに差異が生じた。この原因としては,CuBOTfの複雑な細孔構造のために,水素同位体分子の拡散障害が生じたものと考えられる。 2.単層カーボンナノチューブ(SWNT)へのH_2およびD_2吸着等温線(40K,77K)の測定を行った。SWNTサンプルとしては,チューブが閉孔したものと,開孔したものを使用した。また,FH-GCMCシミュレーションにより水素同位体吸着等温線を計算し,実験結果との比較を行った。実験により得られた水素同位体吸着等温線から重水素選択率をIAST法により計算したところ,閉孔したSWNTサンプルの場合,77Kにおいて1.4,40Kにおいて2.8が得られた。一方,開孔したSWNTサンプルでは,それぞれの温度において重水素選択率は低下した。FH-GCMCシミュレーションは実験結果を良く再現しており,量子分子篩のメカニズムが明らかになった。 3.上記2件については,投稿準備中である。その他,フッ素化活性炭素繊維への水素同位体吸着等温線(20K)を測定することにより,量子分子篩による重水素分子の分離能を確認するなどの成果を得ることができた。
|