2005 Fiscal Year Annual Research Report
パラメータの推定誤差を考慮したCVaR最小化に基づく金融リスク制御
Project/Area Number |
17710125
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
後藤 順哉 筑波大学, 大学院・システム情報工学研究科, 講師 (40334031)
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Keywords | CVaR最小化 / 新聞売り子問題 / 凸計画問題 / 平均-リスクモデル / リスク・マネジメント |
Research Abstract |
今年度は、主に、経営科学において新聞売り子問題として知られる意思決定問題に対して条件付バリューアットリスク(CVaR)を最小化する基準を導入し、その解析を行った。新聞売り子問題は仕入れ数と需要との差がいずれも費用として計上されるような製品仕入れの問題であるが、最も古典的な基準である期待利潤最大化では利潤のばらつきや利潤が下方にぶれる、いわゆる下方リスクが考慮されていない。そこでCVaRを定義する際必要となる損失関数として利潤に-1を掛けて定義した純損失と、在庫費用と機会費用を足し合わせて定義した総費用を採用した2つのCVaRを導入した。現実的なパラメータ設定の下では純損失も総費用も凸関数であり、結果、新聞売り子問題におけるCVaR最小化問題が凸計画問題となること、そして1つの製品のみを扱う場合には適当な仮定の下で当該問題が解析解を持つこと、複数の製品を扱い、しかも仕入れ数に対する制約条件が線形不等式系で表現される場合には線形計画問題(LP)として定式化できることを示した。解析解が得られたことで古典的な期待利潤最大化と同様の扱いやすさが得られ、より複雑な問題設定に対しても有効な基準となりうるのではないかと考えている。また、金融工学におけるポートフォリオ選択の古典的なリスク尺度として知られる分散の新聞売り子での適用が問題の非凸性を導くこと、そしてCVaRがばらつきの代理尺度となりうる点を指摘している。さらに、ポートフォリオ選択の方法論として知られる平均-リスクモデルと同じ様に凸性を保持したまま平均-CVaRモデルに拡張し、LPによる定式化の有効性を主張した。実際、いくつかの数値実験を行い、2つのCVaRの相違点なども指摘した。分析の詳細は筑波大学社会システム・マネジメント専攻ディスカッションペーパーを参照されたい。
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