Research Abstract |
今年度は,特に,製造品質の面を対象として,広義ロスの概念を整理するとともに,それらを把握するフェーズについて研究した.製造現場で生じる不良の改善のためには,品質面での広義ロス(すなわち,不良要因や不良発生メカニズム)を明らかにする「不良要因探索」が必要である.ここに,不良要因とは,不良の原因となる不具合事象,工程条件のばらつきなどを指し,不良発生メカニズムとは,そうした不良要因の生起から不良発生に至るまでの事象やばらつきの伝播プロセスを指す.したがって,不良要因探索とは,広い意味での「逆問題」の一種であるといえる.不良要因探索のために従来から用いられてきた,現場,現物,現実の観察に基づく「3現主義的アプローチ」や,実験計画法などに基づく「仮説検証型データ分析」では,逆問題に対する仮説の立案は人力に依存しており,また,着目すべき工程,設備などの「分析の焦点」があらかじめ適切に絞り込まれていることが前提となる.しかし,現実の多段階生産システムでは,不良要因探索の焦点を当てるべき工程や設備は自明でないことも多く,「分析の焦点」を絞り込むこと自体が一つの課題となっている.一方,大量のデータから探索的に知見を得る,決定木分析,回帰木分析,バスケット分析などといった,いわゆるデータマイニングの手法が,近年,不良要因探索の分野でも注目を集めている.しかし,既存のデータマイニング手法を製造履歴データに単に適用するだけで,問題となっている不良要因や不良発生メカニズムに関する仮説が自動的に抽出できるとは限らない.そこで,本研究では,多段階生産システムでの不良要因探索を,改善者と生産システムの間の相互作用を通じた,仮設の立案と検証のプロセスとして捉え,特に仮説立案フェーズを支援する一つの手段として,多段階品質情報推移モデル(Multi-Stage Quality Information Model : MSQIM)と呼ぶ,探索的データ分析のフレームワークを提案した.
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